にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

オニダルマオコゼを喰らふ話


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鹿児島は枕崎から魚を仕入れた際、オニダルマオコゼが一緒に入荷しました。いつも珍しいお魚があれば送って頂いてます。感謝!

ちなみに、扱いが難しい魚なので今回は、賄いでいただきました。

写真だと、こんな感じです。


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背鰭には強力な毒針があります。ぶよぶよの肉に埋もれていますが、背鰭を立てると出てきます。
毎年、磯遊びやダイビングの方が刺されて病院に搬送されています。死亡例もあるようです。

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まずは業務用の特別な手袋をしてから、背鰭をハサミで切り落とします。これで一安心。
ものすごい苔(藻?)に覆われていますのでしっかり水洗いします。


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頭を切り落とします。
どこまでが頭か迷います。半分以上なくなりました(笑)
次に背鰭の両脇に包丁をいれ、内部の骨ごと背鰭を取り去ります。これで一安心です。


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皮は手で剥けるという情報を目にしましたので、手で引っ張って剥きました。
コツを掴めていないせいか、ずいぶん手こずりました。
包丁で皮をひいても良かったかな…

 

シンプルに味わいたいので、鍋にしました。


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身はグロテスクな外見からは想像もつかないほど上品で淡白な味わい。フグほど食感は強くなく、ホロホロと口の中でほどける身は、タラかアンコウのような雰囲気です。

 

ヒレの部分は皮付きで鍋に入れました。
熱湯で湯引きしてキレイにぬめりを落としてあったのですが、少し臭みがあります。皮付のヒレは唐揚げにしたほうが良かったです。

しかし、ぷるぷるの食感はなんとも魅力的でした。

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むかごの話


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コロコロと可愛く、ホクホクとした旨味。
茹でても、蒸しても、揚げても。
むかごの季節になりました。
むかごとは、山芋や長芋の蔓と葉柄の間にできる球芽の事です。

山芋の標準和名はヤマノイモ。栽培されたものが山芋、自生するものは自然薯と呼ばれて珍重されます。(最近は栽培された山芋が「自然薯」という商品名で売られている事のほうが多いようですが。)


長芋の標準和名はナガイモ。いちょう芋、つくね芋などいろいろな品種があるようです。f:id:nyakomeshi:20201130144141j:image

実は、ヤマノイモとナガイモは別種で染色体数も違うのだそうです。
が、市場ではしばしば混同されています。
どちらも葉の付け根にむかごをつけます。
売られているむかごの場合、どちらのむかごか特に区別せずに売られている事が多いようです。

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むかごは実ではありません。脇芽が栄養を蓄えて丸くなったものです。落ちると、そこから発芽します。
実のほうは、種の周りに羽が付いて、風で飛ばされやすい形をしています。食べるところはありません。こちらも発芽します。
生命力を感じますね。

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むかごは秋の季語としても好まれたようです。
芭蕉「きくの露落て拾へばぬかごかな」
一茶「ほろほろとむかご落ちけり秋の雨」
蕪村「うれしさの箕にあまりたるむかごかな」
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むかごごはんにしても美味しいです。
お米2合、むかごひとつかみ、塩小さじ1/2、酒大さじ2。普段通りの水加減。
炊飯器で炊くだけで美味しいむかごご飯ができますよ。

 

参考文献

日本原色植物図鑑 草本編Ⅲ 保育社

参考HP

きごさい歳時記 http://kigosai.sub.jp/001/

 

コトヒキという魚の話

 


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白いボディーに何とも不思議な模様を持つ魚、コトヒキ。
まず、背鰭の先端に黒点
その下に緩やかな弧を描く黒いラインが二本。
その周りを囲うように、細くて薄めのラインが身体の真横を通過して、尾鰭の縞模様へと変化してゆきます。
まるで水の流れをあらわしたような不思議な模様。墨の濃淡と筆のなめらかな動きで描き出された水墨画を見るようです。

コトヒキという名前も雅やかです。
漢字で描くと「琴弾」。
これは、この魚は釣り上げられると浮き袋の空気を使って鳴き声を出すのでこの名がついたと言われています。

では、琴のような美しい鳴き声かというと、全くそのようなことはありません。
「ググッ!」「ギューギュー」
など、何か物どうしが擦れた雑音のようなうめき声です。
youtubeで検索すれば動画が見つかります。)

 

そういえば、京都府丹後半島には琴引浜という海岸があります。

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鳴き砂が有名な美しい海岸です。
私も訪れた事がありますが、足を踏みしめるたびにパウダースノーのように細かい粒子の砂が擦れて音をたてるのです。

「ググッ!」「ギュー、ギュー」

琴引浜とコトヒキの名前には、直接関係はありません。
ですが、鳴き砂の音とコトヒキの鳴き声は似ているように感じます。

擦れるような音を雑音とせずに琴の音に例えるのは、昔の日本人の美しい感性なのでしょうか。

 

さて、コトヒキの模様を水墨画のよう、などと書きましたが、英語圏の方々の感じ方は全く違っているようです。

英語の名前はいくつかあるようですが、その中の一つに「target fish」があります。

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体側の模様をアーチェリーや弓道の的に例えた名前です。言われてみれば、白黒の的をケーキのように3分の1切り出したならば、コトヒキの模様にそっくりです。
「target fish」は飼育、鑑賞用の魚としてそこそこ人気があるようです。アクアリウムなどに入れると模様が引き立ち、とても美しいです。
ただ、全長40cm位に成長するので飼育を続けるのは大変そう…などと要らぬ心配をしていまうのですが。

 

日本でも、標準和名の「コトヒキ」以外に色々な地方名があります。

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鹿児島から仕入れた時は伝票に「イノコ」とありました。縞模様がイノシシの子、うり坊に似ているから猪子と呼ばれているようです。

さて、このコトヒキの料理ですが、特段難しいポイントはありません。
ただし、エラブタの端が棘のように尖っているので、手を傷つけないよう気をつけます。
先にキッチンバサミなどで切り取ってしまうほうが安心かもしれません。


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小ぶりなものを姿ごと焼いたり煮付けたりする場合は、ウロコを落とした後、エラと内臓を取り除きます。
お造りやムニエルなどに使う場合は3枚に卸します。皮目に旨味があるお魚なので、霜降り造りや皮焼き造りにするのがおすすめです。


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個人的な好みですが、コトヒキは醤油味の煮付けより塩味の煮付け(まーす煮)が美味しいように思います。バターやホワイトソースなど、洋風の味付けも大変よく合います。


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 最後までお読み下さってありがとうございます。

参考HP:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑https://www.zukan-bouz.com/

 

※※※

この記事は以前にTwitterやnoteに投稿した記事をすごく微妙に訂正して再投稿したものです。

なぜ同じ記事をぐずぐずといろんな所に投稿しているかというと、

どこに投稿するのが一番良いか、まだ分かっていないからです。

twitter用に沢山入れたイラストの、微妙さが際立つ逸品となりました。すみません。

 

はじめに

どうも、こんにちは。

にゃこめしと申します。

今にも潰れそうな小さな居酒屋の料理人をしております。

このブログはさまざまな食材について、私が調べた事を書いていくブログです。

 

私は歴史や文化や雑学などいろいろな事を調べる事が好きなのですが、中でもどうでも良い、なかなか役に立たない、ムダ知識が特に愛しくて好きなのです。

 

なのでこのブログには明日使えそうなレシピとか、家事の裏ワザとか、プロの教える料理のコツとか、そういう情報はほとんどありません。

そういった記事はもう既にどなたかが公開してくれていますから。

明日使えないレシピとか、マニアックな食材の調理法とか、そもそも知っていても得しない知識とか、そういう変な事ばかりをを選んで書いて行きたいと思います。

 

更新は気まぐれです。

ゆるく、のんびり、味わって頂ければ幸いです。