ウナギと虚空蔵菩薩の話

土用の丑の日が近づき、あちこちでウナギのチラシやのぼりを目にします。

ところで、昔は地域によっては「丑年又は寅年の生まれだから、ウナギは食べない」と言う人が居たのだそうです。

 

生まれ年の干支で決まる守り本尊

日本では、人は生まれながらにしてほとけに守られているという信仰があり、生まれ年の干支に応じて守り本尊が定められています。

といった感じです。

この中の、丑年・寅年の守り本尊である虚空蔵菩薩とウナギは関係が深いと言われています。

 

虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)とはどんな仏様?

虚空とは宇宙という意味です。その慈悲は宇宙のように大きく、無限の宝物が納められた蔵のように例えられます。

そして、虚空蔵菩薩はその名の通り森羅万象や自然現象から人間までをつかさどり、お守り下さる仏様です。

また、智慧を授けてくれる仏様としても知られています。

京都などで行われる「十三まいり」という習慣はご存知の方が多いのではないでしょうか。数え年13歳という、幼少年期から青年期への人生の転換期に虚空蔵菩薩をお参りし、智慧を授かり明るい将来を祈る習慣です。

 

実は、ウナギはこの虚空蔵菩薩の化身である、又は虚空蔵菩薩のお使いである、と言われています。

丑年・寅年生まれの方がウナギを食べてはいけないという習慣は、干支の守り本尊である虚空蔵菩薩とウナギが結びついているからなのです。

 

虚空蔵菩薩とウナギの民間伝承

ウナギは虚空蔵菩薩の化身である、又はウナギは虚空蔵菩薩のお使いであるという民間伝承は数多く残されています。

しかし、虚空蔵菩薩とウナギの関係は、聖典などはありません。よって、民間伝承の寄せ集めのようになります。

 

埼玉県三郷市に彦倉虚空蔵尊(延命院)というお寺ではこのような伝承が残っています。

秋の大雨が数日つづき、古利根川(中川)が増水し堤防が決壊、みるみるうちに床上まで浸水し、ついには軒先まできてしまった。方々から“助けてくれぇ”という叫び声がきこえ小船を漕ぎだして探していると、子供や老人が太い丸太のようなものに乗ったりつかまったりして、流れのはやい濁流の中で流されずに浮いていた。よくみればそれは丸太ではなくうなぎの大群で、縄のようになってより集まり、子供や老人の体が流されないように抑えつけて多くのひとの命を救った。これらのひとは、その恩返しのためにうなぎを一切口にしないと誓ったという。

このお寺にはうなぎ供養塔があり、毎年10月にうなぎ供養が行われています。

 

三重県桑名市の徳蓮寺というお寺にも虚空蔵菩薩とウナギに関する伝承が残っています。

徳蓮寺の本尊は虚空蔵菩薩で、災害のため一次行方不明となっていたものが、江戸時代初期に土の中から出現したといわれ、そのときに像のまわりには像を守るかのように多くの鰻や鯰がいたという伝説もある。鰻は一般に虚空蔵菩薩の使いとされ、その鰻がここでは鯰とも結びついている。

この徳蓮寺には、ウナギとナマズを描いた絵馬が多数奉納されています。

 

 

また、民俗学者の佐野賢治氏によれば、ウナギは水神・竜神としての性質をもつ生き物とされてきた一面があるといいます。ナマズ地震をおこす存在とされたように、ウナギは洪水や水害を引き起こす存在とされました。

こうしてウナギを恐れ崇める性質が後に虚空蔵菩薩の災害からの救済という性質と結びつき、今日に残っているのだそうです。

 

 

おわりに

ウナギは資源の枯渇が心配されている魚です。チェーン店やスーパーなどで安く大量にウナギが売られているのを見ると心配になります。ウナギを大量に輸入する行為は、さらなるウナギの乱獲を促進してしまいます。

私は子年の生まれなのでウナギは食べても良いのですが、今年はウナギを食べずに近くの虚空蔵菩薩さんをお参りしに行こうと思います。智慧が授かれるかもしれません。

土用の丑の日には未利用魚を蒲焼き丼にして頂きます!

 

参考文献/HP

動植物供養と現世利益の信仰論 高木大祐 著 慶友社

お寺のどうぶつ図鑑 今井淨圓 監修 二見書房

 

彦倉虚空蔵尊(延命院)HP https://unagino-otera.jp/

 

三重県文化財データベース

https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/Miebunka/mobile/bunkazaiMobile/

 

朝日新聞デジタル ウナギをめぐる民俗学

http://www.asahi.com/area/kanagawa/articles/MTW20180704150280001.html

 

嵐山 虚空蔵法輪寺 HP

https://www.kokuzohourinji.com/

サザナミヤッコを食べる

鹿児島・枕崎からサザナミヤッコが届きました。南の温かい海の魚、といった感じです。サンゴ礁が似合います。水族館の人気者。

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幼魚と成魚は模様がまったく違います。幼魚はその美しさから海水魚を飼育する人達には人気者なのだとか。しかし、大きくなるんですね、この魚。今回は大きい方が35cmぐらいでした。

見てください、この歯。f:id:nyakomeshi:20210719132323j:image

エラ蓋の棘も鋭いです。f:id:nyakomeshi:20210719132341j:image

事前にネット上でサザナミヤッコの基本情報や、食べた人のブログなどを調べましたが、臭いが強くて食べられないという意見が散見されました。

一方で、沖縄では食用とされており、美味しいという情報も。

 

こういう魚こそ、腕の見せ所です。

幸い、鮮度はバツグンの状態で手元に届いております。

それでは、捌いていきましょう!

(サザナミヤッコを可愛がって飼育されている方々は、以下閲覧注意となります。ご了承下さい。)

 

 

ウロコは少し固いですが、普通のウロコ引き(百均)を使って剥がせます。手を保護する為と、魚をしっかり掴むための手袋は必須アイテムです。

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肛門から包丁を入れ、お腹を裂きます。次に頭の付け根から包丁を入れ、頭を外します。

鮮度や個体差によりますが、藻食性の魚の内蔵は、臭いが強い場合があります。このサザナミヤッコの内蔵もなかなか強い臭いがしておりました。

内蔵を傷付けないように、慎重に、しかし手早く作業しなくてはなりません。

見事なウズマキ状の内蔵をしておりました。この魚が雑食性でありながらも、藻食性に特化した身体を持っていることが伺いしれます。

 

三枚におろします。
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腹骨や頭は美味しい部位なので、普段は食べるのですが、今回はさすがに臭いが強すぎるで諦めました。

肝心の身の方は…

大丈夫!

きっちりとした温度管理で届いた事、そして手早い処理が功を奏しました!

あとは、残った臭いを感じさせないよう調味料を選んで調理します。

さて、どんな料理になったかというと…

 

まずは柚子こしょう焼です。f:id:nyakomeshi:20210720011942j:image

お次は味噌煮。

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そして、カレースパイス風味のソテー。

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いずれも臭みは全く感じません。

それよりも特筆すべきは身の食感の良さです。脂がのってホックリとした食感はなんとも素晴らしいです。例えるなら、イシダイ?身の厚いホッケ?それともスズキ?

 

結論として、サザナミヤッコはしっかり温度管理して、手早く処理すれば大変美味しい魚です。

臭い魚としてレッテルを貼ってしまうには、あまりにも勿体なく、あまりにも美味しい。この美味しさをお届け出来なくて残念ですが、写真を見て美味しそうだな、と思って下さった方々、どうぞ悔しがって頂ければ幸いにございます。

 

 

 

 

ちゃぶ台返しはいつから存在したのか

昭和の頑固オヤジといえば、ちゃぶ台返しですね。有名なのはやはり、巨人の星星一徹でしょう。そのパロディは数知れず。しかし、このちゃぶ台返し、いつの時代から存在したのでしょうか。気になったので調べてみました。

前提条件

昔から怒りをあらわにする際の動作として物をひっくり返す、という行為は存在します。遡れば紀元前、いや有史以前、もしくは現生人類が登場する以前から存在した行為かもしれません。

しかし、それらは「ちゃぶ台返し」と呼べるものではありませんでした。なぜなら、ちゃぶ台がまだ存在しなかったからであります。

従って、今日皆様がよく知る「ちゃぶ台返し」が成立するには、ちゃぶ台の存在が不可欠なのであります。

 

ちゃぶ台の始まり

ちゃぶ台が歴史の表舞台に登場したのは意外にも近代の事であります。

その起源の一つは西洋料理のダイニングテーブルです。

明治時代、西洋料理店があちこちにできるとテーブルスタイルの飲食店が登場し始めます。西洋料理店は「ちゃぶちゃぶや」や「ちゃぶや」「ちゃぶ店」などと呼ばれる事がありました。

ブロークンイングリッシュで商談が行われる際、「食べる」を「ちゃぶちゃぶ」と言ったのが語源とされています(おそらくは口にものを掻き込むような手振りつきで)。

西洋料理店のテーブルは「ちゃぶだい」と呼ばれるようになりました。

しかしこれはダイニングテーブルの事で、椅子に座って食事をするためのものです。いわゆる「ちゃぶ台」の形とは違います。

 

もう一つの起源はしっぽく料理にあります。しっぽく料理は長崎で江戸時代に発達した料理です。中華料理の影響から円卓に大皿料理を並べ、数人で囲んで食べる、というスタイルを取ります。

最初は円卓と椅子だったのですが、日本の文化に合わせてタタミの上に座って食事をするために背の低い、足の短い円卓が登場します。この見た目はもはや、ちゃぶ台です。実際、ちゃぶ台の事を「しっぽく台」という地域もあるそうです。

 

しかし、この時代(江戸時代〜明治中期頃)は一般的にはお膳で食事をしていました。

まだ「ちゃぶ台返し」ができる機会はほとんど無いといえます。一般家庭でちゃぶ台が定着するのはもう少し後の時代になります。

 

ちゃぶ台をすすめた簡易生活者

明治の後期頃になると、実用性を重視し・余計な物事を排除し・簡易で簡素な生活を目指すという思想が生まれてきます。それらは簡易生活と呼ばれ、知的階級を中心に広がって行きました。

社会主義者堺利彦という人もそんな中の一人でした。明治36年に刊行された『家庭の新風味』のなかでちゃぶ台を使う事を薦めています。

食事のときは家族の会合のときである。家族の団らんは、食事のときに実現されなければならない。このことから考えると、食事はかならず、家族の全員が、おなじときに、おなじ食卓をかこんでなされるべきである。その食卓は円くても、四角くても、テーブルでも、シッポク台でもよいから、ひとつの台でなくてはならない。従来の膳は廃止すべきである。

同時に同一食卓で食事をするとなると、皆が同一の物を食べるべきであることは当然である。男性の中には自分だけ家族とはちがう特別な料理を食べる者もいるが、これは不人情で不道理でけしからんことである。

それまでのお膳での食事は、座る位置やおかずの品数で家父長制や上下関係をはっきりとさせるなど、儀式的な意味合いを持ちました。ちゃぶ台での食事を推進する事で、平等さや簡易さを実現しようとしたわけです。

ちゃぶ台といえば、今では亭主関白や頑固オヤジのイメージと結びついていますが、当時は平等さや簡易さのイメージだったというのが意外で面白い所です。

堺利彦という人は他にもガス台を利用して調理時間や手間を短縮しようという主張もしていたりします。

なかなか面白い人だな、と思うのですが、結構ゴリゴリの思想家、活動家だったらしく、投獄されたことも何度か。政治や思想については私にはわかりませんので、ここでは触れないでおきます。

この頃から(明治後期〜大正)、都市部を中心に、徐々にちゃぶ台を導入する家庭が増えていきます。

もうそろそろ、「ちゃぶ台返し」が発生する条件が整ってきましたね。

 

ちゃぶ台返し全盛期

明治後期〜大正と、徐々にちゃぶ台で食事をする家庭が多くなりました。

そしてついに、大正14年、お膳で食事をする家庭より、ちゃぶ台で食事をする家庭が多くなります。そのままちゃぶ台を使う家庭は昭和25年頃まで増加し続けます。昭和30年代には大抵の家庭はちゃぶ台で食事をするという情況となりました。

 

そう、アノ時代です。古き良き昭和の時代。

さぁ、「ちゃぶ台返し」全盛期!!

全国の頑固オヤジ達が「バカモン!」の怒号とともにちゃぶ台をひっくり返します!

都市部でも農村部でも、東京でも地方でも! ちゃぶ台、ちゃぶ台、ちゃぶ台返し!!!

 

ちゃぶ台返しの時代の終焉

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。

あれだけ隆盛を極めたちゃぶ台も、戦後からジワジワとその数を伸ばしてきた、ダイニングテーブルとイスの勢力に追い越される時代がやって来ます。

昭和45年ごろを境にダイニングテーブルを使う家庭の方が多くなり、徐々にちゃぶ台は姿を消し始めました。それは生活様式の変化とともに家族のあり方の変化も反映したものでした。共働き家庭も増え、典型的な亭主関白・頑固オヤジも徐々に数を減らし始めます。

昭和という時代とともに「ちゃぶ台返し」も終焉を迎えます。

 

終わりに

昭和が終わり、更に平成まで終わり、令和の現代。ちゃぶ台で食事をした事がない若い世代も珍しくありません。

現実世界からは「ちゃぶ台返し」は姿を潜めて久しいです。

しかし、「ちゃぶ台返し」という言葉は若者達も知っており、マンガやメディアの至るところに出現します。YOUTUBEで「ちゃぶ台返し」と検索すると、ちゃぶ台の他にテーブルや会社のデスク、商品の陳列棚など、ありとあらゆる物をひっくり返す動画が出てきます。

ちゃぶ台を用いた「ちゃぶ台返し」とは少し違いますが、「ちゃぶ台返し原理主義にこだわる必要もないでしょう。

ちゃぶ台返し」という概念は形を変えつつも、現代を生きる我々の心の中に生き続けているのです。

そう、「ちゃぶ台返し」は永久に不滅です!

 

 

参考文献

日本の食文化史 石毛直道 岩波書店

 

食事の文明論 石毛直道 中央公論新社

 

簡易生活のすすめ 山下泰平 朝日新聞出版

 

蔓菜(ツルナ)の食べ方とキャプテン・クックの話

ツルナとはどんな野菜?

蔓菜(ツルナ)は海辺の砂浜や岩壁に自生しているハマミズナ科多年草です。日本以外にも、アジア、オセアニア、南米の太平洋側に広く分布しています。この若い芽を摘み取って野菜(山菜)として利用します。

地域によってはイソガキという名前で呼ばれることもあります。私の買ったツルナのパッケージには弦葉(ツルハ)とありました。他にも沖縄でははま菜と呼ばれるようです!

他のよく知られたハマミズナ科の野菜にはアイスプラントがあります。

アイスプラントの仲間だけあって、葉は分厚く、ザラザラしています。水分を含んだ毛が葉の裏側に密集しているので、白く見えます。
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ツルナは生では食べられないのか?

ツルナにはシュウ酸が多く含まれているので、加熱調理が基本です。しかし、料理人のはしくれとしては生のお味も気になります。シュウ酸は食べ過ぎなければ大丈夫です。

一口だけ生で味見をしてみたいと思います。

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アイスプラントの仲間だけあって、プチプチ、ザクザクした心地よい歯ざわりです。

ほうれん草のような程よいエグみ、ケールのような青臭さとともにリンゴのような芳香も感じられます。セロリやケールのようなクセの強い野菜が好きな人なら、食べられるかも、といった味です。

だがしかし!

舌がカスカスになってきました。

更に、喉がイガイガしてきました。

思った以上にアクの強い野菜のようです。

生で食べる事はオススメできません!

 

ツルナのオススメ料理方法

では、ツルナはどうやって食べれば良いのでしょうか?

実は、ほうれん草と同じ使い方ができます。

サッとゆがいて、お浸しや胡麻和えに。
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アクはすっかり抜けて、美味しくいただけます。サッとゆがく程度ならプチプチ、ザクザクした歯ざわりも健在。

油で炒めても美味しいです。f:id:nyakomeshi:20210702024140j:image

 

かきたま汁やお味噌汁にも使えます。
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 ツルナとキャプテン・クックの話

ツルナは英語名でニュージーランド・スピナッチ(NewZealand spinach)と呼ばれます。これはニュージーランドのホウレンソウという意味です。

キャプテン・クックニュージーランドで発見し、ヨーロッパに持ち帰ったと言われています。

キャプテン・クック(Captain Cook)は18世紀イギリス海軍の艦長であり、冒険家です。本名はジェームズ・クック(James Cook)といいます。生涯で3回、世界一周の大航海をおこないました(3回目の航海の途中で死亡)。

ツルナを持ち帰ったのは一度目の世界一周大航海の時です。その後同行した植物学者がヨーロッパに広めました。

以下は英語版ウィキペディアからの引用です。

The species, rarely used by indigenous people as a leaf vegetable, was first mentioned by Captain Cook. It was immediately picked, cooked, and pickled to help fight scurvy, and taken with the crew of the Endeavour.

この植物が野菜として先住民に利用される事は滅多にありませんでしたが、キャプテン・クックによって最初に(食料として)言及されています。

これらはただちに摘み取られ、調理されて漬物にされ、壊血病と戦うための食料として乗組員と一緒にエンデバー号で運ばれました。

キャプテン・クック壊血病の対策としていろいろな食品を試していました。ザワークラウトや麦汁、柑橘類など。

ツルナもその中の一つといえるでしょう。新鮮な野菜を補給する事は壊血病の予防に効果的です。

その甲斐あってか、一度目の航海では壊血病での死者を出さずに航海を成し遂げたと言われています。

これは当時としては非常に素晴らしい功績でした。

(ちなみに、クックは2回目の航海以降なぜか麦汁が効くと盲信し、壊血病を出しまくりました。壊血病の原因がビタミンCの不足によるものだと判明したのはそのずっと後の時代の1932年の事。)

 

ツルナは本当に壊血病の対策として有効だったのか考察してみる

壊血病は数ヶ月にわたり、長期的にビタミンCが不足することで起こる疾患です。最初は脱力感やだるさから始まり、歯茎や粘膜からの出血などの症状が起こり始めます。酷くなると歯は抜け落ち、古傷が開くなどの症状に発展し、死に至ります。

成人男性一人が一日に摂取する事が推奨されているビタミンCの量は100mgとされています。ただし、最低限6〜12mgのビタミンCを摂取出来れば、ギリギリ壊血病による死は免れるそうです。

 

ツルナの可食部100gあたりのビタミンC含有量は22mgとされています。野菜の中では特別多い方ではなく、かといって少ないほうというわけでもありません。

しかし。

先程ツルナは生で食べるには少々アクが強すぎると書いたばかりです。

ビタミンCは水溶性なので、茹でてしまうとほとんどが失われてしまいます。スープに入れて茹で汁ごと食べていたのならビタミンCは摂取出来ますが…

保存の為には塩漬けにしたか、酢漬けにしたのか?乾燥させるとビタミンCはなくなってしまいます。

 

キャプテン・クック御一行様がどのように調理して食べたのか…今となってはわかりません。ツルナだけで壊血病を予防するのは少々無理がありそうです。

しかし当時、ニュージーランド付近は探検されておらず、地図もありませんでした(クックがこの一度目の大航海の際に作成)。次の目的地にたどり着くまで何日かかるのか、そこに食料があるのかもわからない時代。

未知の土地で発見した食べ物がどれ程までにありがたいものだったかは想像にかたくありません。航海の途中の栄養補給としては、とても貴重な機会の一つだったのだと思います。

ツルナが、世界一周、大航海の一助になった可能性は大いにあり得ることですね。

 

↓私はまだ読んでいません、読みたい

↓種、売っているんですね。

 

参考HP

旬の食材百科

https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/index.htm

 

英語版ウィキペディア

tetragonia tetragonoides(ツルナの学名)

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Tetragonia_tetragonoides

 

日本語版ウィキペディア

ジェームズ・クック

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%AF

 

一般社団法人 日本血栓止血学会HP

https://www.jsth.org/wordpress/

白身魚のフライとホキとデコラの話


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セブイレブンの明太のり弁当を食べた

今日はいろいろあって一日中、ドタバタしていたので昼ご飯(夕方になってしまいましたが)はコンビニ弁当で済ませました。

私は普段あまりコンビニの商品で食事を摂ることはないので、割におもしろいな、と思っていただきました。

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セブンイレブンの明太海苔弁当。

着色料が主張強すぎな明太子が少々気になりますが、お目当ては、そちらではありません。

この白身魚のフライです。

半分に割ってみると銀色の皮が確認できます。


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原材料表示に「ホキフライ」と書かれているのが見えますか?

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この「ホキ」というのが魚の名前です。

 

ホキとはどんな魚

ホキとはタラ目マクルロヌス科ホキ属の魚です(メルルーサ科ホキ属に分類される事もある、学名Macruronus novaezelandiae)。

オーストラリアやニュージーランド沖の水深200m〜800mと、比較的深めの海に生息しています。

銀色で細長く、個性的な姿をしています。


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身の質はあっさりした白身でクセがありません。火を通しても固くならないため、パサパサしたりせず、しっとり柔らかです。つまり、白身魚のフライに加工するにはとても良い魚なのです。

 

これらの特徴はアマダイやタラをフライにした時の味・食感と、とても良く似ています。

ですので、それらの魚の代用魚として使われています。

 

ところが、このホキも既に乱獲で資源が減少しているのです。オーストラリアやニュージーランドでは持続可能な漁業を目指して、漁獲量などの制限を始めるようになりました。

 

デコラとはどんな魚

そこでホキに代わって登場したのがデコラという魚です (学名Macruronus magellanicus) 。同じタラ目マクロヌス科ホキ属(メルルーサ科ホキ属に分類される事もある)の魚ですが、こちらはチリやアルゼンチンの沖合に生息しています。


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(↑ホキとデコラの違いを描き分けたかったのですが、両者はあまりにも似ているうえに、資料が乏しいため、同じような絵になってしまいました。)

 

もはや、代用魚の代用魚。

ちなみに流通する時は「ホキ」という名前で流通していますので、消費者にとっては本来のホキとデコラの区別がつきません。

 

スーパーで売られている白身魚のフライも、ホキが使われている事が多いです。

原材料にホキと書いてあっても、産地まで明記されていない場合、ホキかデコラかは分かりませんね。

 

モスバーガーのフィッシュバーガーに使われている魚もホキです。

こちらはニュージーランド産と明記されていましたから、本来のホキが使われている事がわかります。

(ちなみに、マクドナルドのフィッシュバーガーはスケソウダラが原料です)

 

ホキとデコラ、どちらが美味しいかというと、味にあまり差は無いと思います。

どっちでも良いじゃん、と言われれば、そうなのかもしれません。

 

だけど、知りたいとは思いませんか?

食べた魚の本来の名前や姿や生態を!

 

大量流通の魚と未利用魚

ホキやデコラのように、

これまで利用されていなかった魚を発掘し、大量に漁獲して大量に流通させることで、低価格でも美味しい白身魚のフライを食べられるようにしてくれた、たくさんの企業様の企業努力には頭が下がる思いです。

 

しかし、大量漁獲・大量流通ばかりに頼っていては、また貴重な魚資源が枯渇してしまいます。

我々消費者としては、ケース・バイ・ケースで賢い選択をしなければならないと思います。

 

大量に漁獲される魚がある一方で、利用されずに廃棄されてしまう魚もたくさんあります。

それらの魚はまとめて「未利用魚」と呼ばれます。

味が悪い訳ではなく、

  • まとまって取れない
  • 名前が知られていない
  • 調理が少し難しい
  • 見た目や思い込みによるレッテル

などいろいろな理由で流通せずに廃棄されてしまいます。

同じ魚の命ならば、獲れた魚は全て有効に利用したいものです。大切な環境や水産資源を守る事にも繋がります。

普段から積極的に未利用魚を使用する事で、微力ながらも貢献していきたいものです。

 

まとめ

水産資源の事を考えると、もっといろいろな種類のお魚が、本来の名前でバランスよく流通する世の中になってほしいものです。

 

もちろん、ホキのフライが悪いと言っているのではありません。

こちらも大切なお魚の命。食べる機会には感謝して美味しくいただきます。

基本的にすべてのお魚が好きなのです(笑)

 

外国産の魚や、名前を知らない魚はマズイ、と決めつける人がよくいるのですが、そんな事はありません。美味しいお魚は沢山あります。

逆に、どんな高級品の魚でも、流通や調理の過程などで台無しになってしまう事はよくあります。

 

初めて出会った情報に拒絶反応を示さずに、自分の頭と舌で物事を判断してほしいものです。

 

参考文献/HP

似魚図鑑

伊藤 淳 晋遊舎 2008年

 

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑

ホキ

https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%9B%E3%82%AD

デコラ

https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%87%E3%82%B3%E3%83%A9

 

水産庁HP

https://www.jfa.maff.go.jp/index.html

 

消費者庁HP

https://www.caa.go.jp/

 

モスバーガーHP

https://www.mos.jp/

 

マクドナルドHP

https://www.mcdonalds.co.jp/

 

Marine Stewardship Council HP

https://www.msc.org/

↑このサイトのArgentine hokiは学名がMacruronus magellanicusとなっているため、デコラの事であることがわかります。

 

加賀太きゅうりの食べ方の話

ずんぐりむっくりなフォルムに惹かれて買いました。加賀の伝統野菜、加賀太きゅうり(かが・ふときゅうり)。

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普通のきゅうりと同じように使ってはいけません。美味しく食べるためには、下ごしらえの方法が少し違います。

 

まず、皮は固いので、皮を剝いて使います。かつらむきでも、ピーラーでも大丈夫です。f:id:nyakomeshi:20210603014535j:image

種が大きくて食感が悪いので、ワタの部分も取り除いてから使います。

半割にしてスプーンで取り除いても、細かく切った後に包丁で取り除いても、どちらでも良いです。

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その後は生でも、炒めものにも、煮物にも。

お漬物などもおいしいです。

白瓜や冬瓜のレシピなどを調べて加賀太きゅうりで応用すると、お料理の幅が広がります。

 

今回は、お出汁と薄口醤油で色よく仕上げた煮物にしました。「加賀太きゅうりのひすい煮」という素敵な名前がついています。

温かいままでもおいしいですが、蒸し暑いこの季節は、冷凍庫で冷やすと口当たりが良くてとても美味しいです。f:id:nyakomeshi:20210603015915j:image

 

参考HP

金沢市農産物ブランド協会

かがやく美味しさ―加賀野菜

http://www.kanazawa-kagayasai.com/

 

 

エンダイブとチコリの名前の話



エンダイブを手に入れたので、本日はエンダイブチコリーについてのお話。

 

エンダイブ/チコリとは?


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エンダイブとは、見た目は結球しないタイプのリーフレタスに似た野菜です。チリチリ、クルクルとカールした葉が特徴です。

 

チコリーは日本では軟白栽培された芽の部分が出回ることが多いため、形は小さな白菜みたいな形です。色は薄い緑の他に、鮮やかな赤紫の物もあります。

時々、リーフレタスのような形をした品種のチコリーも市場に出回ることがありますが、まだまだ珍しい存在です。

 

どちらもレタスと同じキク科の野菜ですが、レタスがアキノノゲシ属なのに対して、チコリやエンダイブタンポポ亜科キクニガナ属というグループに属します。

 

ほろ苦い風味が魅力的。

洗って生のままサラダなどにします。

 

チコリとエンダイブの名前―英語とフランス語の混乱―

エンダイブというのは英語の呼び方です。日本では“きくちしゃ”又は“にがちしゃ”という和名もありますが、エンダイブという呼び方が一番メジャーなようです。

ところが、このエンダイブ(endive)、フランスではシコレー(chicorée)といいます。

 

では、チコリ(chicory)はフランス語でどう言うのかというと…アンディーブ(endive)と言います。

 

そう、英語とフランス語では呼び方が逆になっているのです。混乱してしまいそうですね。

 

美味しんぼの茶番劇

アノ国民的グルメ漫画美味しんぼにもチコリとエンダイブをネタにした回があります。

 

フランス在住のモブ女「これがアンディーブでこれがシコレー」

モブ男「そうか」

帰国したモブ男「アンディーブ美味しい」

周囲「君ィ、それはチコリーだよ」

モブ男「シコレー美味しい」

周囲「これはエンダイブだよ、わっはっは」

モブ男「恥かいた、君は嘘を教えたんだな」

モブ女「ひどいわ」

山岡、栗田登場、

なんだかんだで、元鞘

こんな感じの茶番劇が繰り広げられます(笑)

 

チコリとエンダイブの名前は古代エジプトギリシャでも混乱していた?

このエンダイブとチコリ、レタスと並んで歴史の古い野菜です。古代エジプト古代ギリシャでも食べられていたという記録が残っています。

古代ギリシアの著述家が残したいくつかの記述には、そのことがはっきりと記されている。

「…エジプト人は、野生のチコリをアンディーブと呼んでいる。この野菜は栽培される場合には、セリスと呼び変えられ、大きいもの小さいもの、葉の多いもの、少ないものなどさまざまな種類がある…」

「…エジプトチコリと呼ばれる野生のアンディーブがある…」

「エジプトではタロイモの次に尊ばれているのはチコリである。これは野生のアンディーブのことである。これはとても頑丈な野菜で、ロープでしばることもできる…」

何かもう…紀元前の時点で既に混乱しています。

 

まとめ

チコリーエンダイブの名前はイギリスとフランスでは逆になり、混乱してしまいそうですね。

そして古代エジプト古代ギリシャでも…

 

現代日本では、「珍しいカタカナ語、言える俺カコイイ」と思う人が多いようで、「チコリ」というのが一般的になってきたと思えば

「アンディーブ」と言える俺カコイイ

などと思っちゃう人も多いようです(笑)

商標も様々。

まだまだ混乱は収まりそうにありません。


岡山県
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↓割に大きかった
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↓サラダにしました
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参考文献/HP

美味しんぼ より「野菜の名前」

ビッグコミックス美味しんぼ」第63集収録

雁屋哲花咲アキラ 小学館

 

 

ファラオの食卓―古代エジプト食物語

吉村作治 講談社