にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

マトウダイと聖ペテロの話


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大きな口に長くたなびく背ビレ。全身をぐるり取り囲むようにとげが囲み、その真ん中に目を引く黒い紋様。絶大なインパクトのある御姿の魚、マトウダイ


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漢字では「馬頭鯛」と書きます。この魚の口は摂餌の際に大きく前方に伸びます。その顔が馬のようだから、という理由で名付けられたようです。「的鯛(マトダイ)」と呼ばれる事も多く、これは体の模様が的に見えるから、という理由です。こちらの方が分かりやすいですね。


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さて、このマトウダイ、日本ではあまり一般的ではない魚だけれども、フレンチやイタリアンでは高級食材として重宝されている魚です。フランス語での名前を「saint-pierre(サン・ピエール)」、イタリア語での名前を「Pesce san pietro(サン・ピエトロ)」といいます。いずれもキリスト教の聖人ペテロを指す名前です。


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マトウダイの側面の模様は、聖人ペテロがこの魚を持った時の指の跡が残ったもの、と言われています。聖書に出てくるエピソードはこのようなものです。

 

マタイによる福音書17章27節
に行って釣りをしなさい。最初に釣れた魚を取って口を開けると、銀貨が一枚見つかるはずだ。それを取って、あなたと私の分として納めなさい。
(新共同訳)

 

「湖」とあるのは、翻訳によっては「海」とされている事もあるようですが、いずれにせよガリラヤ湖(ティベリアス湖)であるとされています。

ガリラヤ湖は淡水の湖です。


マトウダイ海水魚

 

実は、この湖にはセント・ピーターズ・フイッシュと呼ばれるティラピアの仲間が生息しており、聖書の魚はこちらの魚であるとされています。

どうやらマトウダイの方は、後の時代の人々が側面の模様と聖書のエピソードを結びつけて名付けたもののようです。

 

 

以上のエピソードはネット上で書かれたものを目にする機会はあったのですが、元となる情報がわからずにいました。

英語版ウィキペディアによると、この本の中で言及されている内容なのだとか。

Fish Behavior in the Aquarium and in the Wild (Comstock Books)

作者:Reebs, Stephan

英語なので私は未読です、すみません。

参考文献

新約聖書 新共同訳

 

参考HP

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑

https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%A6%E3%83%80%E3%82%A4

英語版ウィキペディア

https://en.m.wikipedia.org/wiki/John_Dory