ウナギと虚空蔵菩薩の話

土用の丑の日が近づき、あちこちでウナギのチラシやのぼりを目にします。

ところで、昔は地域によっては「丑年又は寅年の生まれだから、ウナギは食べない」と言う人が居たのだそうです。

 

生まれ年の干支で決まる守り本尊

日本では、人は生まれながらにしてほとけに守られているという信仰があり、生まれ年の干支に応じて守り本尊が定められています。

といった感じです。

この中の、丑年・寅年の守り本尊である虚空蔵菩薩とウナギは関係が深いと言われています。

 

虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)とはどんな仏様?

虚空とは宇宙という意味です。その慈悲は宇宙のように大きく、無限の宝物が納められた蔵のように例えられます。

そして、虚空蔵菩薩はその名の通り森羅万象や自然現象から人間までをつかさどり、お守り下さる仏様です。

また、智慧を授けてくれる仏様としても知られています。

京都などで行われる「十三まいり」という習慣はご存知の方が多いのではないでしょうか。数え年13歳という、幼少年期から青年期への人生の転換期に虚空蔵菩薩をお参りし、智慧を授かり明るい将来を祈る習慣です。

 

実は、ウナギはこの虚空蔵菩薩の化身である、又は虚空蔵菩薩のお使いである、と言われています。

丑年・寅年生まれの方がウナギを食べてはいけないという習慣は、干支の守り本尊である虚空蔵菩薩とウナギが結びついているからなのです。

 

虚空蔵菩薩とウナギの民間伝承

ウナギは虚空蔵菩薩の化身である、又はウナギは虚空蔵菩薩のお使いであるという民間伝承は数多く残されています。

しかし、虚空蔵菩薩とウナギの関係は、聖典などはありません。よって、民間伝承の寄せ集めのようになります。

 

埼玉県三郷市に彦倉虚空蔵尊(延命院)というお寺ではこのような伝承が残っています。

秋の大雨が数日つづき、古利根川(中川)が増水し堤防が決壊、みるみるうちに床上まで浸水し、ついには軒先まできてしまった。方々から“助けてくれぇ”という叫び声がきこえ小船を漕ぎだして探していると、子供や老人が太い丸太のようなものに乗ったりつかまったりして、流れのはやい濁流の中で流されずに浮いていた。よくみればそれは丸太ではなくうなぎの大群で、縄のようになってより集まり、子供や老人の体が流されないように抑えつけて多くのひとの命を救った。これらのひとは、その恩返しのためにうなぎを一切口にしないと誓ったという。

このお寺にはうなぎ供養塔があり、毎年10月にうなぎ供養が行われています。

 

三重県桑名市の徳蓮寺というお寺にも虚空蔵菩薩とウナギに関する伝承が残っています。

徳蓮寺の本尊は虚空蔵菩薩で、災害のため一次行方不明となっていたものが、江戸時代初期に土の中から出現したといわれ、そのときに像のまわりには像を守るかのように多くの鰻や鯰がいたという伝説もある。鰻は一般に虚空蔵菩薩の使いとされ、その鰻がここでは鯰とも結びついている。

この徳蓮寺には、ウナギとナマズを描いた絵馬が多数奉納されています。

 

 

また、民俗学者の佐野賢治氏によれば、ウナギは水神・竜神としての性質をもつ生き物とされてきた一面があるといいます。ナマズ地震をおこす存在とされたように、ウナギは洪水や水害を引き起こす存在とされました。

こうしてウナギを恐れ崇める性質が後に虚空蔵菩薩の災害からの救済という性質と結びつき、今日に残っているのだそうです。

 

 

おわりに

ウナギは資源の枯渇が心配されている魚です。チェーン店やスーパーなどで安く大量にウナギが売られているのを見ると心配になります。ウナギを大量に輸入する行為は、さらなるウナギの乱獲を促進してしまいます。

私は子年の生まれなのでウナギは食べても良いのですが、今年はウナギを食べずに近くの虚空蔵菩薩さんをお参りしに行こうと思います。智慧が授かれるかもしれません。

土用の丑の日には未利用魚を蒲焼き丼にして頂きます!

 

参考文献/HP

動植物供養と現世利益の信仰論 高木大祐 著 慶友社

お寺のどうぶつ図鑑 今井淨圓 監修 二見書房

 

彦倉虚空蔵尊(延命院)HP https://unagino-otera.jp/

 

三重県文化財データベース

https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/Miebunka/mobile/bunkazaiMobile/

 

朝日新聞デジタル ウナギをめぐる民俗学

http://www.asahi.com/area/kanagawa/articles/MTW20180704150280001.html

 

嵐山 虚空蔵法輪寺 HP

https://www.kokuzohourinji.com/