どうも、にゃこめしです。
今回も古代ローマの美食家アピキウスのエピソードです。
紀元二世紀頃の作家、アテナイオスの「食卓の賢人たち」にはこんなエピソードが見られます。
アピキウスという男がいました。彼は非常に金持ちで贅沢な男で、何百万ドラクマもの金を腹の中に費やしました。
ある時アピキウスはカンパニアの都市ミントゥルネに滞在して、とても大きな海老を食べました。その海老は地中海のどこで捕れる物よりも大きく、立派でした。
しかし、アフリカのリビアで捕れる海老はもっと大きくて美味しいという噂を聞きつけたアピキウスはすぐに船に乗り込み、リビアに向けて出航しました。
当時の船旅は今よりもずっと困難がつきものです。嵐や荒れ狂う海に苦労しながらもアピキウスはリビアにたどり着きました。
その噂はアピキウスの船がリビアの港に着く頃にはすでに伝わっていました。リビアの漁師たちはアピキウスの船が見えるやいなや、その日の獲物のうちで最高の海老をもって、船に近寄って行きました。
期待に胸を膨らませながら、船の欄干から身を乗り出すアピキウス。
しかし彼は、漁師の海老をちらりと一瞥しただけで、ミントゥルネの海老と大した違いがない事に気づきます。
がっかりしたアピキウスはリビアに上陸する事もなく、そのまま帰ってしまいました。
なんと贅沢な…と思うような逸話ですが、それだけ新たな食材を探し出すのに情熱を傾けていたのかもしれません。
アピキウスは食の芸術家か、それともワガママな贅沢者か。
あなたはどちらだと思いますか?
参考文献/
古代ローマの饗宴 エウジェニア・サルツァ・プリーナ・リコッティ著 武谷なおみ訳 平凡社
COOKERY AND DINING IN INPERIAL ROME Apicius著 JOSEPH DOMMERS VEHLING編