前回から引き続き、文献に基づいて再現した古代ローマ料理を公開していきます。
食事や文化を知ることで古代ローマが身近に感じること間違いなし!?
前回の記事はこちら
鶏肉のパルティア風
古代ローマにはシルフィウムという植物がありました。万能の薬草であり、しかも美味しい調味料だったシルフィウムはローマ人達に採り尽くされ、ついに絶滅してしまったといわれています。困ったローマ人達は隣国のパルティアからよく似た植物とそこからとれる調味料を輸入しました。それは絶滅したシルフィウムとは味も香りも全く違うものでしたが、調味料として古代ローマ使われ続けました。
実際にパルティアにこの料理があったかは分かっていませんが、パルティアから輸入した調味料をふんだんに使うことからローマ人は「パルティア風」と名付けたようです。
詳しい作りかたはこちらの記事かYoutubeからご覧頂けます。
豚の脳のパテ風
美食文化が花開いた1~2世紀のローマ帝国。
饗宴は人間関係を築いたり、仕事の話を進めたりと社会生活においてなくてはならない者でした。招待主は凝った料理を用意してやってくる賓客を驚かせることに情熱を注ぐのでした。例えばクジャクやフラミンゴ、ヤマネ、ウツボなどです。
そんな饗宴料理の材料によく使われるものの一つが豚の脳でした。お粥に入れたり、卵と混ぜて詰め物に使ったり…
古代ローマの美食家は脳のクリーミーなコクを好んだようです。
詳しい作り方はこちら
豚の子宮のソーセージ
古代ローマでは豚肉がとても好まれました。
庶民の食事から豪華さを競う饗宴、そして皇帝の食卓にまで豚は登場します。
博物学者プリニウス曰く、“他の肉はそれぞれ一つの風味しかもたないが、豚は50の風味を持つ”のだとか。
古代ローマの人々は豚の育て方や部位ごとの味、食肉にする時期などにかなりのこだわりを持っており、特に好まれた部位は雌豚の乳房や胃、子宮でした。
こちらの料理は豚の腸の代わりに子宮を使ったソーセージのような料理です。
子宮はサクサク、プリプリした食感で皮の食べ応えがすごいソーセージ、といった印象です。
古代ローマのヒョウタン料理
古代ローマではヒョウタンが栽培されており、若い実は食用に、成熟した実は水入れなどに使われました。
現在でもイタリアでは一部で食用のヒョウタンが栽培されており、ズッキーニと同じように調理して食べるようです。(ちなみにヒョウタンもカボチャもイタリア語でzuccaというそうなので、紛らわしいです…)
食用ヒョウタンが手に入らなかったので
・ユーラシア大陸原産のウリ科の野菜 … 冬瓜、白瓜
・アメリカ大陸原産ではあるが食味が似ているらしい … ズッキーニ
という三種類のウリ科の野菜で代用して作っています。
↓こちらは魚醤とワインのシンプルな調味料で仕上げたあっさりとした料理
↓こちらはクミンとハーブ類のソースで仕上げた、パンチのある味
詳しい作り方はこちらから
マグロのソテー古代ローマ風ソース
古代ローマの人々は海産物が大好きでした。マグロも古代ローマで好んで食べられていた魚です。プリニウスの『博物誌』によればマグロは首、腹、喉の部分が珍重されたそうです。ちょうど脂ののった部位が好まれていたことが分かります。
ソースは魚醤、蜂蜜、玉ネギ、赤ワインにハーブ類を混ぜ合わせて作っています。ドミグラスソースか甘酢餡のような、甘みと酸味としょっぱさが合わさった味に仕上がりました。
ここまで古代ローマの料理を色々つくってみた感想は、古代ローマの料理はどれも日本人の口に合うということです。
私自身は和食(特に海鮮と居酒屋料理がメイン)の料理の仕事をしていた経験から、どうしても和食の発想に偏ってしまっている部分はあるかもしれませんが、
欧米の研究者のレシピの解釈はどうもガルム=魚醤をうまく扱い切れていない部分があるように感じてなりません。
しかし、現在に残っている『アピキウスの料理書』のレシピが不完全であるからこそ、その余白をどう解釈するかの違いが生まれ、面白いのだとも思います。
これから先もどんどん古代ローマの料理を作って研究してみたいと思います。
参考文献/
『アピーキウス 古代ローマの料理書』ミュラ・ヨコタ=宣子訳 三省堂
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