古代ローマといえば豪華な饗宴のイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には豪華な食事ができるのは一部の金持ちの貴族などに限られていました。
ローマの街の庶民はなかなかご馳走ざんまいとはいきません。
しかし、運がよければご馳走にありつくチャンスもありました。
古代ローマ人は昼過ぎからは公共浴場、つまりテルマエで過ごしました。
テルマエは大きな浴室があるのはもちろん、体育館やマッサージ室、それに図書館や談話室も備えた公共施設でした。
ここには貴族も庶民もやってきます。利用料は非常に安く、貧乏人も利用する事ができました。そこで、金持ちの貴族と知り合いになることができれば、チャンスです。
豪華な食事に招待してもらえました。
中には食事の招待を受けられるまで、何軒もテルマエをはしごした人もいたようです
しかし、招待主が気前の良い人ばかりとはかぎりません。
中にはご馳走のいちばん美味しい部分を招待主と親しい仲間だけで食べてしまい、同席した庶民にはご馳走の端っこや質の劣った料理を出す、ひどい招待主もいたのだとか。
詩人マルティアリスはこんな詩を残しています。
なぜあんたと同じご馳走を出してはもらえないのだろう
あんたはルクリヌス湖で育った大きな牡蠣を食い、
こっちはムール貝を歯で割って吸っている
あんたにはイグチタケがあるが
こっちにはまずいキノコがあるだけ
あんたのお皿にはヒラメ、こっちには溝魚が1尾
こんがり焼けた雉鳩の腿の肉であんたは腹いっぱいになるだろうが
こっちには籠の中で死んだカササギが出てくる始末だ
あんたと一緒に食事をしているのに
あんた抜きで食べているような気がするのはどういうわけだろう?
スポルトゥラが廃止されたご利益にあずかれるよう、
せめて同じものを食べてはもらえまいか!
庶民の悲哀や不公平への不満が伝わってきます。
こんな詩が約2000年後まで伝わっているのですから、食べ物の恨みというのは恐ろしいものですね。