どうも、にゃこめしです。
2022年1月~12月の1年間、全国4会場を巡回している、特別展「ポンペイ」Special Exhibition POMPEII。京都会場へ観に行ってきました。
展示内容はブロンズや大理石の像を始め、細密なモザイク画や壁画の数々。食器や装飾品。そして「炭化したパン」など食品を含む日用品など幅広い品々。いずれも約2000年前の物とは思えない技術の高さと保存状態の良さに驚きの連続でした。
ポンペイ展で見てきた展示品の中で食材に関する物を備忘録的にまとめてみたいと思います。展示品はいずれも写真撮影可能でした。ここに載せる写真は展示会場で撮った写真と、購入した図録を撮影したものとがあります。
- バックス(ディオニソス)とヴェスヴィオ山
- 萼型クラテル
- 仮面のあるパテラ
- ワイン用のアンフォラ
- アヒルのケーキ型
- 目玉焼き器、あるいは丸パン焼き器
- 瓶とケース
- 雄鶏とカボチャ
- 果物のある静物
- パンのある静物
- 炭化したパン
- 炭化したイチジク
- 炭化した穀類
- 炭化した干しぶどう
バックス(ディオニソス)とヴェスヴィオ山
バックス(ディオニソス)はワインの神様なのでブドウが一緒に描かれる事が多いのですが、この絵はブドウが衣装になってしまっています(笑)
足元にいる犬のような動物は実はヒョウで、こちらもバックスのアトリビュートとされています。
背後には噴火前のヴェスヴィオ山の姿が。今のように頂上が平らではありません。
山の斜面にはブドウ畑が広がっていました。
萼型クラテル
クラテルとは水とワインを混ぜ合わせるための大きめの容器です。ワイングラスのように見えますが、高さ68cmのサイズです。
饗宴の際はクラテルを用いて、その場にふさわしい濃さにワインを希釈し、それぞれの盃に注ぎます。
現在のワインを水で薄めると美味しくありませんが、当時のワインは現代と違う物でした。かなり甘い飲み物であり、アルコール度数も16~18度だったと考えられています。
その為、ワインを薄めずに飲むことは大酒呑みで無作法とされました。
仮面のあるパテラ
パテラは神々に献酒するための器です。
把手のついた物はちょっと珍しく、大抵は把手はなくて真ん中に凸部分のある平皿です。
ところが解説板及び図録には、宴会の前に手を清めるのに使われたと書かれています。そのような使い方を示す資料もあったのでしょうか…?もしそうだとしても、フィンガーボウルのような実用品ではなく、儀式的意味合いの強い物だったと思われます。
同じ解説板及び図録に、英語ではlibation bowl(献酒用ボウル)と書かれていました。
やはり献酒用か?疑問が残ります。
ワイン用のアンフォラ
思った以上に大きいです。高さ107cmとありますので、把手が胸の位置に来てしまいます。背の低い私には持ち上げる事が出来なさそうです。
先が尖っているので、地面に埋め込んだり、木枠にはめ込んだりして使われました。
底が平らな方が使いやすいじゃん、と思うのですが、古代から7世紀頃にわたって、かなり広い地域で先の尖ったアンフォラが発掘されています。やはり当時はこのほうが実用的だったのでしょうか。そういえば、縄文土器にも先の尖ったものがありましたね。
アヒルのケーキ型
アヒル…といっても生きているアヒルの姿ではなく、アヒルの丸焼きの形をしています。饗宴の料理に意外性を求めるローマ人の姿が想像できます。
目玉焼き器、あるいは丸パン焼き器
日本人なら、特に関西人なら「たこ焼き器!」と言いたくなるような形状です。大きさはたこ焼きより一回り大きめです。
まさか、ジャンボたこ焼き?
瓶とケース
これも既視感が…
アレです、宴会場で瓶ビールを一気に何本か運ぶためのやつ。発想が同じです。
雄鶏とカボチャ
女性実業家ユリア・フェリクスの家の壁画です。丸々と肥った雄鶏は良いとして、右下に描かれている物が何かが問題です。
なぜならカボチャはアメリカ大陸原産の野菜だからです。
英語の解説ではrootas and gourdとなっています。gourdはひょうたんや瓜やヘチマやゴーヤなどをひっくるめた、ウリ科の実の総称です。こちらは納得がいきます。
カボチャもウリ科の植物とはいえ、カボチャと訳してしまうのはこれで良いのでしょうか?
果物のある静物
左側に描かれているのはプラム(桃)。枝に実る様子や内部の種が見える描写など、現代の図鑑でもありそうな構図です。
次に描かれているのはニンニクに見えるけどイチジク、黒っぽいのがナツメヤシ(デーツ)です。図録には言及されていませんでしたが、明らかにピーナッツ!と思われるモノも。ナツメヤシには金貨と銀貨が一枚ずつ差し込まれています。
ガラスのグラス類も繊細な輝きを放っており、当時の技術の高さがうかがえます。
パンのある静物
今回のポンペイ展の展示品の目玉であった、「炭化したパン」の生前の姿がしのばれます。ふっくらして美味しそうです。パンの横にあるのはおそらく豆の入った容器、との事。
私はひよこ豆のスープかな、と思いました。
炭化したパン
これ以上にに当時の食生活を我々に伝えてくれる物があるだろうか、と称えたくなります。ふんわりしたテクスチャー、八等分された切り目もそのまま。
2000年近い過去の遺物とはおもえない保存状態に、言葉を失うばかりです。
大きさは直径20cm、手頃なサイズ感です。一個で二食分くらいの量に思えます。
しかし、密度はわからないので、現代のパンよりずっしり食べごたえがあった可能性もありますね。
炭化したイチジク
しっかりと形が残っています。
生のイチジクではなく、干しイチジクだったので、より保存状態がよかったそうです。
炭化した穀類
元が何の穀物だったのか…もはや見分けがつきませんね。古代ローマの料理本には野菜や豆と一緒に穀類を煮込んだ、おかゆのようなスープのレシピがあります。そんな料理を作る予定だったのかもしれませんね。
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炭化した干しぶどう
展示されていた干しブドウと、図録に載っていた干しブドウは別の物でした。
当時はかなりメジャーな食材であり、ポンペイのあちこちの台所から発見されたのでしょう。
語りたいこと、疑問に思ったこと、覚えておきたいことなどが多すぎて、記事が長くなってしまいました。今回はここまで。
後編に続きます。
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