リクァーメンという調味料は古代ローマの食文化の記録において欠かせない存在です。古代ローマのレシピ集アピキウスの『料理書』でも、日本料理のお醤油のように味の基礎となる調味料として使われています。
写真:ポンペイから出土したガルムやリクァーメンを保存していたアンフォラ
しかし、リクァーメンの製造方法については一次資料が乏しく、リクァーメンが何者であったかについては、研究者の間でも見解に差があるようなのです。
以前このブログで紹介したガルムという古代ローマの魚醤があるのですが、リクァーメンもガルムと同じく魚醤である、とする見解が主流なようです。しかし、違うとしている文献もあるのです。
普段私は情報の信頼性を高めたいと、複数の文献を参考にしているのですが、リクァーメンに関しての記述はそれぞれ少しづつニュアンスが違いました。
それらを比較して考えてみたいと思います。
ガルムとリクァーメンは同じものだとする本
『古代ローマの食卓』
ギリシア語でガルム、ラテン語でリクァーメンだとする本、
『アピーキウス古代ローマの料理書』
両者を区別せず、どちらも「魚醤」と書いてある本。
『シーザーの晩餐』
ガルムはアンチョビーソースのようなものでリクァーメンは塩水に若干の風味をつけたものだとする本
『古代ローマの饗宴』
リクァーメンをだし汁(Broth)だとする本。
『Cookly 』
手元にある本だけでも、実に様々です。
しかし、やはりガルムとリクァーメンはほぼ同じものだとする文献のほうが多いようです。
アピキウスの『料理書』ではリクァーメンは主に塩味をつけるために使われており、塩とリクァーメンの両方を使うレシピはわずかしかありません。
お醤油文化圏の日本人にとっては特に違和感がないように感じますが、
風味と塩味のバランスとしては、やや塩味に重きを置いた調味料だったのかもしれません。
写真:参考文献の一部