古代ローマの調味料であるガルム(魚醤)を作った際の副産物として、濾しとった後の滓が残ります。
それがアレックです。
アレックはガルムの滓だ。まるまるのものでもなく濾されたものでもない滓だ。
これはまた他に用いどころのない小さい魚によって作ることが始まった。
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それからアレックは一種の贅沢品になった。そして無数の種類がつくられるようになった。
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かくしてアレックはカキ、ウニ、イソギンチャク、ボラの肝臓などでつくられ、あらゆる口に適するような塩が無数の方法で腐らされるようになった。
文化人の贅沢な味覚にはこれら付随的な記述で十分としなければならない。
アレックは最初はガルムの副産物的な位置付けだったものの、いつしかアレックそのものを味わうようになったことが伺えるような記述です。美食家達は様々な食材で作られた珍味を求めたのでしょう。
(もちろん、庶民のための安いアレックもありました。そちらはあいかわらず、ガルムの副産物という位置づけ)
アレックは魚介類と塩を混ぜ合わせ、熟成発酵させるという製造方法から、日本の塩辛のようなものであったといわれています。
美食家アピキウスはヒメジの肝でアレックを作るのが特に望ましい、と述べました。
なんだか日本酒に合いそうですね…
プリニウスはアレックは医療にも若干の用途があり、このような時に使われたと記しています。
もちろんこれらは古代の民間療法であり、現代医学の視点から見ればおかしなものばかりです。効果がないどころか場合によっては症状を悪化させそうなものも含まれていますので、絶対に実践しないで下さい。
それにしても、お尻にアレックを注入…
下の写真は私の持っている中で、最もアレックに近そうな食材。ベトナムの魚の塩辛で、イエローフィンバルブというコイの仲間の小魚が使われています。