にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

即席ガルム―文献に基づいて古代ローマの調味料を再現

どうも、にゃこめしです。
古代ローマの調味料、ガルムやアレック、リクァーメンに関する記事をいくつか投稿してきました。
しかし、ガルムの製造方法は分かっているものの、作って試してみるわけにはいきません。
理論上は大丈夫なハズですが、衛生的な設備も、安全管理も、品質検査もできない状況で個人が作ったものは食中毒のリスクが高すぎます。
そこで今回はキチンとした文献資料に基づきつつも、個人でも安全に作れそうな古代ローマの即席ガルムを再現してみたいと思います。

10世紀のビザンツ帝国、皇帝コンスタンティノス7世の時代に編纂された『ゲオポニケ』という農業書があります。
ここには古代ローマ古代ギリシアの農業に関する知識が集められており、
その中にはなんと、家庭で作ってすぐに使える即席ガルム(又は即席リクァーメン)の作り方も書かれているのです。
その内容とは、こうです。

海水に卵一個を投げ入れて浮かんでくるかどうかを試し、塩分の強さを見る。
沈むようであれば塩分が足りない証拠である。新しい素焼きの土器にこの塩水と魚を入れ、オレガノを加え、よくおこった火にかけて沸騰させ、煮詰まってくるまで煮続ける。ここに濃縮ブドウ酒をいれる人もある。冷ましてから、汁が済んでくるまで二、三度濾し、封をして貯蔵する。

これなら火を通すので食中毒の心配はなさそうです。
早速試してみました。

材料

水500ml、塩150gくらい、イワシ200g、オレガノ(乾燥)10g

まずは、水500mlに塩を10gずつ足していき、どこで卵が浮くのかを試してみました。
古代の卵は今より小さかったハズなので、なるべく小さい、Mサイズのものを用意しました。
鍋に水500mlを入れ、どんどん塩を足していきますが、なかなか卵は浮きません。
途中で塩が溶けにくくなってきたので、水を少し温めながら溶かしました。
水500mlに対して塩を150g溶かしたところで、卵が浮くようになりました。
ちょっと見えにくいですが、卵が浮いている様子がおわかり頂けるでしょうか?

少し大きめの鍋に先程の塩水を入れ、イワシ200gとオレガノ10gを加えて、火にかけます。

沸騰したら弱火にして、そのまま20分程煮詰めていきます。
ものすごい量の塩が鍋肌にくっつきます。
20分経ったところで、ザルの上にキッチンペーパーを敷き、鍋の中身を濾していきましょう。

カメラが曇って、不鮮明な写真になって申し訳ありません…
イワシと一緒にすごい量の塩が濾し取られてしまいました。
先ほどあんなに塩を足したのに、なんだかもったいない気分です。
あれ程までに濃い塩水を作る必要性があったのかは謎ですが、なるべく塩分を濃く保つことで保存性を高めているのかもしれません。
濾した後の即席ガルムは粗熱を取った後、清潔な瓶などに入れて冷蔵庫で保管し、なるべく早く使い切りましょう。

さて、即席ガルムの味ですが、かなり塩味が強いです。
強すぎる塩分に押され気味ですが、イワシの旨味もほのかに感じられます。
オレガノイワシの生臭さを消して、すっきりとした風味を付け加えてくれます。
しかし、即席ならではの欠点もありました。
ゆっくり熟成発酵させた魚醤のような複雑かつ濃厚な旨味はありません。
前回の記事で様々な魚醤の味の感想をグラフにしましたが、この即席ガルムの味の印象をそのグラフに落とし込むとすると、この辺りでしょうか?

グラフからはみ出てしまいました。 

熟成発酵させていないので旨味の元となるアミノ酸発生させる工程がないため、塩分とのバランスが悪く、ちょっと塩味がキツすぎる印象です。
古代ローマの料理を試してみたい場合、やはりしょっつるやコラトゥーラなどの魚醤を買ってきたほうが、美味しく出来上がります。

興味のある方は、ぜひ試してみて下さい。(魚醤を買った方が美味しいですが…(笑))