にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

アピキウスの『料理書』の構成

どうも、にゃこめしです。

前回はアピキウスの料理書が辿った歴史について書きました。↓

今回はアピキウスの『料理書』がどんな構成になっており、各巻に書かれている内容を簡単にご紹介したいと思います。

アピキウスって誰だ?と思われた方はこちら↓

アピキウスの料理書は全10巻で構成されています。それぞれに文体が違い、おそらく別々の人物によって書かれたり、編集された物と考えられています。

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第一巻 勤勉な料理人
この巻の内容は主に二つです。一つ目はハーブや蜂蜜を混ぜたお酒の調合の方法です。古代ローマではワインを水で割って飲んでいました。その時に蜂蜜で甘みを足したりハーブで香り付けをしたりする事も多かったようです。苦ヨモギ酒やバラ酒などのレシピが紹介されています。
二つ目の内容は食材の保存法です。冷蔵庫がない時代の事ですから、酢に漬ける、塩水に浸すなど、様々な方法が紹介されています。料理のレシピがほとんど書かれていない事もこの巻の特徴になります。

第二巻 魚肉と獣肉のすり身
この巻はエビのすり身にイカのすり身、肉団子など、現代の私達の感覚からしてもとてもおいしそうな料理名が並びます。
なんと腸詰め、つまりソーセージのレシピも書かれています。

第三巻 菜園の庭師
アスパラガス、キュウリ、キャベツ、などのお馴染みの野菜からヒョウタン、フダンソウ、アオイなど馴染みのない野菜まで…様々な野菜とそれに合わせるソースが並びます。サラダや温野菜のような感じでいかにも体に良さそうです。「胃腸のためのつけ合わせ料理」なんてのもあります。

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第四巻 種々の材料を使った料理
ここでは五種類の料理が解説されています。
サラ・カッタビアという水に浸したパンと野菜などを冷やして食べる料理。
パティナという平たい鍋で作るオムレツやスープのような料理。この本ではキャセロールと訳されています。
色々な具材のスープに小麦粉でとろみをつけて仕上げたクリーム煮
大麦のスープ
温野菜
の五つです。それぞれの料理には「別の作り方」として材料や作り方を少しづつ変えた複数のレシピが紹介されています。

第五巻 豆類
驚くべき事に、この巻の内容は大半がエンドウ豆のレシピです。その数なんと16種類。他にはソラマメやヒラマメ、ヒヨコ豆などわー使った料理や大麦や小麦で作るお粥のレシピもあります。

第六巻 鳥料理
ここではニワトリだけでなく、ありとあらゆる種類の鳥が登場します。野鴨、ハト、ガチョウに始まり、ヤマウズラ、ツル、ダチョウに至るまで調理法とソースのレシピが並んでいます。

第七巻 贅沢な料理
猪、トリュフ、カタツムリなど、今日でも珍味で高級な食材を使ったレシピが並びます。また、豚肉料理が多いのも特徴です。

第八巻 獣
子豚、牛、羊にヤギ。ローストや網焼、丸焼き、それらに合わせるソース。お肉好きにはたまらない料理が並びます。
猪、鹿、や野兎などのジビエ料理なども多いです。

第九巻 海
イセエビ、イカ、タコ、ウニ、マグロ。この巻の前半部分は贅沢なレシピが並びます。対して後半部分では塩漬け保存された魚の調理法が紹介されています。

第十巻 漁師
この巻は魚料理に使うソースのレシピの羅列となっています。専門家によると、これらのソースのレシピは一世紀のアピキウス本人が書いた可能性がある部分だと言われています。

以上がアピキウスの『料理書』の大まかな構成です。機会があれば各レシピの中から作れそうな物を紹介していきたいと思います。

ですが。

アピキウスの『料理書』の本当に面白い所は実現不可能なレシピにあるのかもしれません。ヤマネ、フラミンゴ、オウムなど…

作ってみる事はできませんが、それらのレシピも折に触れて紹介していきたいと思います。

参考文献/アピーキウス古代ローマの料理書

ミュラ=ヨコタ宣子訳 三省堂