にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

白身魚のフライとホキとデコラの話


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セブイレブンの明太のり弁当を食べた

今日はいろいろあって一日中、ドタバタしていたので昼ご飯(夕方になってしまいましたが)はコンビニ弁当で済ませました。

私は普段あまりコンビニの商品で食事を摂ることはないので、割におもしろいな、と思っていただきました。

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セブンイレブンの明太海苔弁当。

着色料が主張強すぎな明太子が少々気になりますが、お目当ては、そちらではありません。

この白身魚のフライです。

半分に割ってみると銀色の皮が確認できます。


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原材料表示に「ホキフライ」と書かれているのが見えますか?

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この「ホキ」というのが魚の名前です。

 

ホキとはどんな魚

ホキとはタラ目マクルロヌス科ホキ属の魚です(メルルーサ科ホキ属に分類される事もある、学名Macruronus novaezelandiae)。

オーストラリアやニュージーランド沖の水深200m〜800mと、比較的深めの海に生息しています。

銀色で細長く、個性的な姿をしています。


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身の質はあっさりした白身でクセがありません。火を通しても固くならないため、パサパサしたりせず、しっとり柔らかです。つまり、白身魚のフライに加工するにはとても良い魚なのです。

 

これらの特徴はアマダイやタラをフライにした時の味・食感と、とても良く似ています。

ですので、それらの魚の代用魚として使われています。

 

ところが、このホキも既に乱獲で資源が減少しているのです。オーストラリアやニュージーランドでは持続可能な漁業を目指して、漁獲量などの制限を始めるようになりました。

 

デコラとはどんな魚

そこでホキに代わって登場したのがデコラという魚です (学名Macruronus magellanicus) 。同じタラ目マクロヌス科ホキ属(メルルーサ科ホキ属に分類される事もある)の魚ですが、こちらはチリやアルゼンチンの沖合に生息しています。


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(↑ホキとデコラの違いを描き分けたかったのですが、両者はあまりにも似ているうえに、資料が乏しいため、同じような絵になってしまいました。)

 

もはや、代用魚の代用魚。

ちなみに流通する時は「ホキ」という名前で流通していますので、消費者にとっては本来のホキとデコラの区別がつきません。

 

スーパーで売られている白身魚のフライも、ホキが使われている事が多いです。

原材料にホキと書いてあっても、産地まで明記されていない場合、ホキかデコラかは分かりませんね。

 

モスバーガーのフィッシュバーガーに使われている魚もホキです。

こちらはニュージーランド産と明記されていましたから、本来のホキが使われている事がわかります。

(ちなみに、マクドナルドのフィッシュバーガーはスケソウダラが原料です)

 

ホキとデコラ、どちらが美味しいかというと、味にあまり差は無いと思います。

どっちでも良いじゃん、と言われれば、そうなのかもしれません。

 

だけど、知りたいとは思いませんか?

食べた魚の本来の名前や姿や生態を!

 

大量流通の魚と未利用魚

ホキやデコラのように、

これまで利用されていなかった魚を発掘し、大量に漁獲して大量に流通させることで、低価格でも美味しい白身魚のフライを食べられるようにしてくれた、たくさんの企業様の企業努力には頭が下がる思いです。

 

しかし、大量漁獲・大量流通ばかりに頼っていては、また貴重な魚資源が枯渇してしまいます。

我々消費者としては、ケース・バイ・ケースで賢い選択をしなければならないと思います。

 

大量に漁獲される魚がある一方で、利用されずに廃棄されてしまう魚もたくさんあります。

それらの魚はまとめて「未利用魚」と呼ばれます。

味が悪い訳ではなく、

  • まとまって取れない
  • 名前が知られていない
  • 調理が少し難しい
  • 見た目や思い込みによるレッテル

などいろいろな理由で流通せずに廃棄されてしまいます。

同じ魚の命ならば、獲れた魚は全て有効に利用したいものです。大切な環境や水産資源を守る事にも繋がります。

普段から積極的に未利用魚を使用する事で、微力ながらも貢献していきたいものです。

 

まとめ

水産資源の事を考えると、もっといろいろな種類のお魚が、本来の名前でバランスよく流通する世の中になってほしいものです。

もちろん、ホキのフライが悪いと言っているのではありません。
こちらも大切な魚の命。食べる機会には感謝して美味しくいただきます。
基本的にすべての魚が好きなのです(笑)

外国産の魚や、名前を知らない魚はマズイ、と決めつける人がよくいるのですが、そんな事はありません。美味しいお魚は沢山あります。
逆に、どんな高級品の魚でも、流通や調理の過程などで台無しになってしまう事はよくあります。

初めて出会った情報に拒絶反応を示さずに、自分の頭と舌で物事を判断してほしいものです。

 

参考文献/HP

似魚図鑑 伊藤 淳 晋遊舎 2008年

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
ホキ
https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%9B%E3%82%AD
デコラ
https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%87%E3%82%B3%E3%83%A9

水産庁HP
https://www.jfa.maff.go.jp/index.html

消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/

モスバーガーHP
https://www.mos.jp/

マクドナルドHP
https://www.mcdonalds.co.jp/

Marine Stewardship Council HP
https://www.msc.org/
↑このサイトのArgentine hokiは学名がMacruronus magellanicusとなっているため、デコラの事であることがわかります。