にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

日本の魚醤の製造方法と歴史について

どうも、にゃこめしです。
前回は古代ローマの魚醤、ガルムについて書きました。

今回は比較と参考のために、日本の魚醤の製造過程を調べてまとめてみました。石川県能登半島には伝統的に作られてきたいしるという魚醤があります。いしり、よしると呼ばれる事もあります。f:id:nyakomeshi:20230612020055j:image
イワシのいしるの作り方はこうです。

  1. 頭や内蔵つきの丸ごとのイワシを、20%位の食塩とともに漬け込む
  2. 時々攪拌しながら桶の中で、半年から1年程度熟成・発酵させる
  3. できたイシルは桶の下に溜まるので、桶の下の栓を抜いて取り出し、
  4. 煮沸して殺菌・ろ過・ビン詰めなどの工程を経て出荷

昔は各家庭で作られるものだったようで、晩秋から初冬(11月頃)にかけて仕込み、翌年の晩夏から初秋にでき上がったそうです。

一方、秋田県しょっつるはハタハタなどの魚が使われます。

30~40%の塩と一緒に漬けこみ、攪拌しながら1、2年常温で熟成発酵させたのち、煮沸・濾過・瓶詰めなどの工程を経て出荷されます。
商品にもよりますが、いしるよりしょっつるのほうが塩分濃度が高い傾向にあるようです。

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これらの魚醤は、原料となる魚介類に食塩を加え、高塩分濃度で腐敗を抑えながら、魚介類が元々持っている自己消化酵素により1年以上の時間をかけて分解されていくことにより出来上がります。
その時に魚介類のタンパク質の一部が分解され、アスパラギン酸グルタミン酸などのアミノ酸が生成されます。
これが魚醤の独自の旨味を作り出すのです。

日本で最古の魚醤・塩辛に関する記録は、奈良の藤原京跡から発掘された木簡です。
地方から税として納められた品物の荷札に「鯽醢(ふなのひしお)」と書かれていたそうです。
藤原京に宮廷があったのは694年から710年の間です。鯽醢(ふなのひしお)はこの間に納品されたものですが、魚醤・塩辛はもっと前の時代、文字記録に残らない時代から日本で食べられていたとされています。

 

参考HP/
(株)ぶなの森
https://bunanomori.com › plofile02
能登の魚醤「いしり」とは-2(製造法・料理法・世界の魚醤)

中央水産研究所
http://nrifs.fra.affrc.go.jp › syottsuru
しょっつる:水産加工品のいろいろ

参考文献/
日本の食文化史―旧石器時代から現代まで
石毛直道 岩波書店