にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

古代ローマのヒョウタン料理を再現

古代ローマではククルビタ(cucurbita)と呼ばれていた作物がありました。

それは若い実は食用にし、成熟した実は中の種を取り除き硬い外皮をお酒の容器や小物入れなどに使います。
何の作物か分かりましたか?

そう、ヒョウタンの事です。

古代ローマ博物学プリニウスは『博物誌』でヒョウタンについてこのように記述しています。

“(前略)ヒョウタンは近頃浴室で水差しの代わりに用いられるようになった。
それは酒を貯蔵する瓶として長いこと使用されてきた。

ヒョウタンの皮は青いうちは薄いが、それでも食用に供するときには掻きとられる

(中略)この植物の頭に最も近い種子は長いヒョウタンを生ずる。そしてその尻に近い種子も同様だ。中央の種子は丸いヒョウタンがなる。そして縁にある種子は太くて短いヒョウタンがなる(以下略)”

『博物誌』の内容の正確さはともかくとして、古代ローマでは長いもの、丸いもの、といろいろな形のヒョウタンが利用されてきたのでしょう。

イタリアでは食用ヒョウタンが今でも栽培されており、ズッキーニと同じような調理法で食べるそうです。
(カボチャもヒョウタンもズッカと呼ばれ、ヒョウタンの方にはzocca da vinoやzucca bottigliaなどの種類がある)

夏の間に食用ヒョウタンを手に入れたかったのですが、残念ながら手に入りませんでしたので代わりにウリ科の野菜を3種類用意して、古来ローマのヒョウタン料理を再現してみたいと思います。

白瓜、冬瓜、そしてアメリカ大陸原産だけどズッキーニも用意しました。

左からズッキーニ、冬瓜、白瓜

古代ローマのレシピ集である『アピキウスの料理書』にはヒョウタン料理がいくつか伝わっています。今回はヒョウタンのソテーにシンプルなソースをかけた料理を作ってみたいと思います。

『アピーキウス古代ローマの料理書』三省堂より

なお、アピキウスの料理書には材料の分量も詳しい調理手順も書かれていません。料理人によって再現される料理が変わってきます。このブログは私が作るとどうなったのか、という視点でお読みいただければと思います。

材料(二人前)

  • ズッキーニ、冬瓜、白瓜など 適量
  • オリーブオイル 大さじ3
  • 赤ワイン(できれば甘口のもの)大さじ1
  • 魚醤 大さじ1(塩分量は商品によって違うので味見しつつ調節して下さい)

こちらのシンプルなレシピの方から作っていきましょう。

  1. まずは下ごしらえです。
    冬瓜は適当な大きさに切り分けて皮を剥き、8㎜くらいの厚さにスライスします。
    白瓜も皮を剥き8㎜くらいの厚さにスライスし、真ん中の種とワタをスプーンくりぬいて取り除きます。
    ズッキーニは皮を剥く必要はないので洗って同じ厚さに切っておきます。

  2. 葡萄酒入りガルムのかわりに甘口の赤ワインとお好みの魚醤を混ぜて馴染ませておきます。
  3. 次にフライパンにオリーブオイルを注ぎ、1.を並べて焼いていきます。
    中火で7~8分、途中でひっくり返し、両面焼き色がついたら焼き上がりです。
  4. お皿に並べて2.のソースをかけて、胡椒をふったら完成です。

とてもシンプルな料理ですね。

さあ、試食してみましょう!

ソースは魚醤の旨味とワインの甘み酸味が程よく、旨味がすごく強いポン酢のようです。淡白な味のウリ科野菜の味ととてもよく合います。

油をたっぷり吸った冬瓜はナスのような旨味があり、予想以上の美味しさでした。
白瓜は火を通してもシャクシャクして面白い食感、
そしてズッキーニはさすが、安定のクオリティーで美味しいです。

なんだか和食を思わせるような素材の美味しさを活かした一皿でした。

今回は冬瓜、白瓜、ズッキーニと3種類の野菜で代用して作りましたが、
もしもイタリアでヒョウタンの料理を食べたことのある人がいらっしゃいましたらコメントでどんな味だったか教えて下さい。

次回の記事ではクミンソース仕立てのスパイシーなしヒョウタン料理をつくります。
もちろん、文献を基に再現していますので、ぜひご覧ください!

参考文献/

【参考文献】
『アピーキウス・古代ローマの料理書』
ミュラ・ヨコタ=宣子訳 三省堂

プリニウスの博物誌』
プリニウス著 中野定雄・中野里美・中野美代訳 雄山閣