どうも、にゃこめしです。
先日でポンペイ展で「イセエビとタコの戦い」というモザイク画を見てきました。
このテーマは壁画の題材として好まれたようで、「イセエビとタコの戦い」を描いた画は他にも存在します。しかしこれには一体どのようなストーリーがあるのでしょうか。
じつはこれは、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの著作から引用したテーマだとされています。
ローマ人はギリシャの学問に精通していることが大切な教養でした。大きな家を持つ者はギリシャの神話や哲学者の語った内容などを壁画にして、教養の高さを示していたといいます。
アリストテレスは著書『動物誌』で以下のように記しています。
タコと大型のエビとアナゴは三すくみの関係にある。
すなわちまず、タコは大エビを食べる。大エビは自分と同じ網の中にタコがいると分かっただけで恐怖のために死んでしまうほどだという。
ところがタコは、一方でアナゴには食べられてしまう。アナゴは体がぬるぬるしていて、タコも戦うすべがない。
しかしこんなアナゴも、大エビにはやられてしまうそうだ。
アリストテレス曰く、イセエビとタコとアナゴはお互いに得意な相手と苦手な相手を一つずつ持つことで、三者とも身動きが取れなくなる状態だというのです。
ジャンケンのグーチョキパーのような存在です。
ちなみここで言及されているアナゴはウツボの事だと思われます。
古代ローマの文献ではウツボはアナゴやウナギと混同されており、翻訳の際も区別されないことが多いです。
しかし、この三すくみのテーマを説明する場合、ウツボと解釈したほうが自然なので、以下ウツボと表記します。
ポンペイ展で展示されていモザイク画、「イセエビとタコの戦い」の中央部分を拡大してみると
上にウツボがいるのがわかります。
さらに、別の「イセエビとタコの戦い」のモザイク画を見ると
こちらは右側にウツボがいます。
さらに、こちらはローマ国立博物館所属の紀元前2世紀頃のテンペラ画です。
(画像はwikimedia commonsより)
ウツボも戦いに参戦しております。絡まり合って三つ巴状態です。
ちなみに、アリストテレスの著述と現実の生態とを比較してみると、少々納得のいかない部分もあります。現実の生態では、
タコはイセエビを好んで捕食します。
ウツボはタコを好んで捕食します。
そして、イセエビは海底の微細な貝類や甲殻類、節足動物などを捕食します。ウツボは食べません。(アナゴも食べません)
これでは三すくみが成立しませんが、日本で昔から伝わっている三すくみの例である、虫拳(カエル、ナメクジ、ヘビ)なども必ずしも納得のいくものではありません。
ジャンケンみたいにまぁそういうモノ、という認識程度で良いのかもしれません。
ちなみにイセエビはウツボと共生関係を築く事があるそうです。
イセエビは捕食者であるタコからウツボに守ってもらい、
ウツボは大好物であるタコがイセエビを捕食しようと寄ってくるからだそうです。
ウツボとイセエビが一緒に仲良く過ごしている光景が、アリストテレスにはイセエビがウツボを襲って食べているように見えたのかもしれませんね。