にゃこめしの食材博物記

YouTubeチャンネル「古代ローマ食堂へようこそ」の中の人のブログ。古代ローマの食文化についての記事を中心に、様々な歴史や食文化について調べて書いているブログです。

クレオパトラの焼き鳥の話

どうも、にゃこめしです。

先日、1934年のアメリカ映画『クレオパトラ』を見ていると、とても気になるシーンがありました。

何と、小鳥の焼き鳥が登場するのです。

古代ローマの将軍アントニウスクレオパトラが出会うシーンです。
クレオパトラは自身の色気や巧みな話術、大勢の踊り子が繰り広げる幻想的なショーでアントニウスを誘惑します。誘惑に負けてワインを一気に飲み干すアントニウス

そこへご馳走が運ばれてきました。その中には長い串に刺さった小さな肉片が。

「これは何?」尋ねるアントニウスクレオパトラはこう返します。

「ナイルのヒゲガラ」

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ヒゲガラ(髭雀)というのはスズメ目ヒゲガラ科に属する小鳥です。両頬に黒い模様があり、ヒゲに見えることが名前の由来です。
全長は15㎝程。食べる部分は少ししかなさそうですね。

f:id:nyakomeshi:20220708010518j:image(↑画像:Wikimedia Commonsより)
ヒゲガラは現在エジプトに生息していないのですが、2000年程前のエジプトは温暖で湿潤な気候だったらしいので、現在と生息域が異なるのかもしれません。

しかしながら、少々疑問が残ります。
英語字幕で確認してみると、このセリフは
「reed bird from the Nile」となっています。f:id:nyakomeshi:20220707013201j:image

reed birdで調べてみると、ヨシキリの仲間の小鳥の総称のようです。湿地のヨシ原に巣を作り、繁殖します。reed(ヨシ、葦)のbird鳥というわけです。

f:id:nyakomeshi:20220708111739j:image(↑画像:Wikimedia Commonsより)

では、あの焼き鳥はヨシキリだったのでしょうか。

ヒゲガラもヨシキリ類と同様に、ヨシ原で営巣し繁殖します。ヨシキリとは種族が違いますが、reed birdという言葉の中にはもしかするとヒゲガラも含まれているのかもしれません。

古代エジプトでは家畜や家禽の肉の他に色々な小鳥類も食べていました。

アントニウスは怪訝な顔でヒゲガラの焼き鳥を見つめていますが、この直後、何のためらいもなくヒゲガラの焼き鳥を口へ放り込みます。なぜなら古代ローマ人も様々な小鳥を食用としていましたから…。

ニワムシクイ、ズアオアトリ、ズアオホオジロ、スズメ等々…。

エキゾチックな雰囲気のワンシーンを飾る小道具として、効果的に使われるヒゲガラの焼き鳥でした。

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食材としての小鳥達について記述している部分があります。