白いボディーに何とも不思議な模様を持つ魚、コトヒキ。
まず、背鰭の先端に黒点。
その下に緩やかな弧を描く黒いラインが二本。
その周りを囲うように、細くて薄めのラインが身体の真横を通過して、尾鰭の縞模様へと変化してゆきます。
まるで水の流れをあらわしたような不思議な模様。墨の濃淡と筆のなめらかな動きで描き出された水墨画を見るようです。
コトヒキという名前も雅やかです。
漢字で描くと「琴弾」。
これは、この魚は釣り上げられると浮き袋の空気を使って鳴き声を出すのでこの名がついたと言われています。
では、琴のような美しい鳴き声かというと、全くそのようなことはありません。
「ググッ!」「ギューギュー」
など、何か物どうしが擦れた雑音のようなうめき声です。
(youtubeで検索すれば動画が見つかります。)
そういえば、京都府の丹後半島には琴引浜という海岸があります。
鳴き砂が有名な美しい海岸です。
私も訪れた事がありますが、足を踏みしめるたびにパウダースノーのように細かい粒子の砂が擦れて音をたてるのです。
「ググッ!」「ギュー、ギュー」
琴引浜とコトヒキの名前には、直接関係はありません。
ですが、鳴き砂の音とコトヒキの鳴き声は似ているように感じます。
擦れるような音を雑音とせずに琴の音に例えるのは、昔の日本人の美しい感性なのでしょうか。
さて、コトヒキの模様を水墨画のよう、などと書きましたが、英語圏の方々の感じ方は全く違っているようです。
英語の名前はいくつかあるようですが、その中の一つに「target fish」があります。
体側の模様をアーチェリーや弓道の的に例えた名前です。言われてみれば、白黒の的をケーキのように3分の1切り出したならば、コトヒキの模様にそっくりです。
「target fish」は飼育、鑑賞用の魚としてそこそこ人気があるようです。アクアリウムなどに入れると模様が引き立ち、とても美しいです。
ただ、全長40cm位に成長するので飼育を続けるのは大変そう…などと要らぬ心配をしていまうのですが。
日本でも、標準和名の「コトヒキ」以外に色々な地方名があります。
鹿児島から仕入れた時は伝票に「イノコ」とありました。縞模様がイノシシの子、うり坊に似ているから猪子と呼ばれているようです。
さて、このコトヒキの料理ですが、特段難しいポイントはありません。
ただし、エラブタの端が棘のように尖っているので、手を傷つけないよう気をつけます。
先にキッチンバサミなどで切り取ってしまうほうが安心かもしれません。
小ぶりなものを姿ごと焼いたり煮付けたりする場合は、ウロコを落とした後、エラと内臓を取り除きます。
お造りやムニエルなどに使う場合は3枚に卸します。皮目に旨味があるお魚なので、霜降り造りや皮焼き造りにするのがおすすめです。
個人的な好みですが、コトヒキは醤油味の煮付けより塩味の煮付け(まーす煮)が美味しいように思います。バターやホワイトソースなど、洋風の味付けも大変よく合います。
最後までお読み下さってありがとうございます。
参考HP:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑https://www.zukan-bouz.com/
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この記事は以前にTwitterやnoteに投稿した記事をすごく微妙に訂正して再投稿したものです。
なぜ同じ記事をぐずぐずといろんな所に投稿しているかというと、
どこに投稿するのが一番良いか、まだ分かっていないからです。
twitter用に沢山入れたイラストの、微妙さが際立つ逸品となりました。すみません。