にゃこめしの食材博物記

どうも、にゃこめしです。自称・おもしろ食材探検家で、面白い食材を探したり、普通の食材の面白い話を探したりするのが好きです。歴史・文化・生物学に興味があります。京都で小さな飲食店を共同経営している料理人。

皇帝ティベリウスとヒメジの話

ヒメジという魚がおります。

身は熱しても柔らかくふっくらとして、大変おいしい白身魚です。

皮は炙ると大変香ばしくエビやカニのような良い香りがするし、骨の周りは味わい深く旨味が強いです。

日本のヒメジとは別種になりますが、地中海の方にもヒメジの仲間がたくさん生息しています。数種類まとめて「ルジェ」と呼ばれており、フレンチでは高級食材です。

以前、『ルジェという魚の話』という記事にも書きましたが、古代ローマでヒメジは大変好まれていた食材でした。お金持ちや貴族、美食家たちもこぞって手に入れたといいます。

今回もヒメジ(ルジェ)に関する面白い逸話を見つけました。

 

紀元14年~26年頃の話と思われます。(ティベリウスが皇帝になってからカプリ島に引きこもるまでの間に起こった出来事と思われる逸話なので)

あるとき、皇帝ティベリウスに立派なヒメジが献上されました。なんと2.5㎏サイズだったと言われています。ヒメジにしてはかなりの特大サイズです。

ティベリウス帝のもとに、巨大なヒメジが贈り物として送られてきた。だが皇帝は市場に持って行って売りさばくよう命令し、次のように予言して言った。

「みなの者、このヒメジがアピキウスかオクタヴィウスのものにならなかったら、私は地獄に堕ちてもよいぞ!」

予想は見事に的中した。二人の男は競売で激しく競り合い、結局はオクタヴィウスが勝利して、友人たちからやんやの喝采を浴びた。皇帝の魚を五千セルテルティウスで買ったのと、付け値の額でアピキウスを負かしたことで、彼は大きな栄誉を獲得したのである。

セネカ『書簡集』95、42

当時は農業用奴隷一人の値段が1200〜2000セルテルティウスだったといわれています。

特大ヒメジ一匹は奴隷2.5〜4人分の値段がつけられた事になります。

古代ローマの美食がいかに熱狂的だったかわかるようなエピソードです。

↓アピキウスって誰だ?と思われた方はこちら


古代ローマの美食家アピシウスの話 - にゃこめしの食材博物記

参考文献/参考HP

古代ローマの饗宴

エウジェニア・サルツァ・プリーナ・リコッティ著 武谷なおみ訳 平凡社

 

年代記 上 タキトゥス著 国原吉之助訳 岩波書店