古代ローマの美食家達は雌豚の希少部位を特に好みました。
乳房、胃袋、そして子宮などです。
今回は豚の子宮が手に入りましたので古代ローマの美食家が残した資料をもとに料理を再現してみたいと思います。
これが豚の子宮です。人間のものと随分形が違いますね。一度に10頭もの子を妊娠出来るよう、子宮は二股に分かれ、子宮角と呼ばれる部位がとても大きくなっています。
これを使って料理してきましょう。
参考文献は古代ローマのレシピ集である『アピキウスの料理書』の日本語訳です。
なお、ご覧の通りアピキウスの料理書には材料の分量も、詳しい調理手順も書かれていません。料理人によって少しづつ再現される料理が変わってきます。
この記事では私が作るとどうなるのか、という視点でご覧頂ければと思います。
尚、手に入りにくい材料は身近なもので代用しています。
それでは、作ってみましょう。
材料
- 豚の子宮 1頭分
- 豚ひき肉 500g
- ネギ(根元の白い部分) 30g
- ヘンルーダ 少々(なくても良い)
- クミン 小さじ1/2
- コショウ 少々
- 魚醤 大さじ1(お好みのもの、今回の試作ではヌクマムを使いました。)
- 松の実 30g
- オリーブオイル 大さじ2
- ディル(乾燥) 小さじ1/2
- ネギ(青い部分) 50g 茹でやすいように縛っておく
- 魚醤 小さじ1
作り方
- 豚の子宮を10cmくらいの長さにぶつ切りにし、粗塩で揉んでから水ですすぎヌメりを落とす。ぬめりが取れるまで5~6回繰り返す。
臭みが気になる場合は牛乳(分量外)に漬け込み臭みを抜いておく。
- ネギとヘンルーダを細かく刻んですり鉢へ入れる。
さらにクミン、コショウ、魚醤を加え一緒にすり鉢ですり混ぜる。
- 豚挽肉に2を加え、全体が滑らかになるまでよく混ぜる。
- 3に粗く刻んだ松の実と胡椒をくわえ、ざっくりと混ぜる。
- 4を絞り袋に入れ、1で下ごしらえしておいた豚の子宮に詰める。
茹でると縮んで端から具が出てくるので、具は真ん中に寄せて前後は少し空間を開けておく
- 鍋に湯を沸かし、縛っておいたネギの束、オリーブオイル、魚醤小さじ1、ディルを加える。
沸騰したら5を投入し、しっかりと火が通るまで茹でる。
- 適当な大きさに切り分け、盛り付ける。
さぁ、試食してみましょう!
子宮の部分はプリプリ、サクサクしています。
ちょっと鶏の砂肝にも似ていて、食べていて楽しくなる歯触りです。
レバーのようなクセもなく、見た目以上に食べやすい味といえます。
中に詰めた挽き肉はクミンやコショウのおかげで現代のソーセージに近い味に仕上がっています。
ミンチのしっかりと肉を感じる食べ応えの中にサクサクした松の実のアクセントが効いています。
これは皮の食べ応えがスゴいソーセージ、といった感じの一皿になりました。
古代ローマの人々は豚を余すところなく味わい尽くす術をよく知っていたのだと実感できました。
参考文献